2016年10月9日

書評: 「ニッポンの個人情報」

書誌情報: 鈴木正朝、高木浩光、山本一郎、「ニッポンの個人情報」、翔泳社、2015、ISBN 978-4-7981-3976-0

(本書は2015年2月に翔泳社の井浦様よりご恵贈いただきました。書評が大変遅れて申し訳ありません。)

鈴木正朝、高木浩光、山本一郎。

この3人の名前のうち、一人でも見て恐怖を感じないようであれば、日本のプライバシー問題、特に個人情報の扱いが実務者にとってどれほど難しいかについての、理解が不十分と思ったほうがいい。正直いってこの御三方のうち一人と対峙しなければならなくなったら、シッポを巻いて逃げたい。その3人がまとめて鼎談しているこの本は、正直いって重い。重すぎる。怖くて読めない。「ニッポンの個人情報」とか、「プライバシーフリーク」とか、そんな軽そうな言葉に騙されてはいけない。

しかし、現状の混沌と矛盾、法律の手抜き、そしてそもそもの「プライバシー権」への認識がバラバラになっている現状を知るには、この本に書かれている内容ぐらいは知っておかなくてはならないだろう。その意味では対談形式で重要な論点が各所にタップリと含まれているこの本は貴重な存在といえる。重要なポイントは全部QRコードでURLへのアクセスがしやすくなっているのも良い。

この書籍の発刊後、個人情報保護法は改正され、「平成27年9月9日から2年以内に全面施行」される予定である(日本政府の個人情報保護委員会のページより)。この法律改正により、「個人情報」を仕事に使うすべての事業者(個人も例外ではない)がこの法律の適用対象となる。そういう意味では、もう誰も逃げられなくなっているのである。今までの経緯と問題点をふまえた基本をおさえる上では、必読であろう。