2016年12月30日

2016年を振り返って

気がつけばもう大晦日の前日である。

2016年は物理乱数ハードウェアやその他IoT関連の実験、温故知新的なオブジェクト指向技術の学習、そして2度のErlang/OTP関連の出張など、過去2年よりもさらに自分の持ち駒を増やさないといけない年だったように思う。いろいろ厳しい時期もあったが、なんとかお客様のおかげで乗りきることができた。以下に公開できる活動の中で主なものを記す。

  • Erlang/OTP関連では、3月にサンフランシスコのErlang FactoryにてArduino UNOとErlang/OTPを接続するための技術に関する発表を行い、9月にはストックホルムのErlang User Conferenceで、Erlang/OTPでの各種疑似乱数の利用に関する総括的な技術の発表を行った。年内にはOTPにrandモジュールにjump functionをmasterブランチにマージすることができた。来年のOTP 20で公式にリリースされる予定である。
  • 5月にはQNAPのNASを導入した。これでバックアップ用のリソースを一元管理することができるようになり、業務での信頼性を上げることができたように思う。
  • 8月のMaker Faire Tokyo 2016では「科学技術教育フォーラム」の一展示として、物理乱数を使ったサイコロであるavrdiceの展示を行った。来訪者の方々から質問をたくさんいただくことができ、乱数技術、あるいはランダムネスに対する社会的関心は一定レベル存在することを確認できたのは収穫だった。
  • 物理乱数モジュールavrhwrngと新部裕さんのNeuGの追試は昨年から継続して行っている。これに関連して、技術評論社の雑誌Software Designに物理乱数と疑似乱数に関する連載を同誌2016年8月号から10月号まで3回執筆した。また、2016年12月号には、データベースの基礎技術であるハッシュとドキュメント指向データベースの解説記事を執筆した。
  • FreeBSD関連では、devel/git-lfsとjapanese/dbskkd-cdbのPort maintainerを引き継ぐことになった。これに伴い、Poudriereによるテスト環境を整備した。
  • 12月にはQiitaにてC言語、FreeBSD、そしてErlangのアドベントカレンダーを開設し、自らもElixirのカレンダーを含め23件の記事を執筆した。
  • 2014年12月から運用しているFlightRadar24.comの受信局は、NTT西日本からの回線更新に伴う停止やその他の一時的な回線障害による事故はあったものの、引き続き順調に動作している。2016年11月からはさらにアンテナの高さを上げてカバー範囲を広げ、KIX/ITM/UKB各空港周辺の情報提供の精度を上げることができている。

一方、引き続き生活の中で不要なものをどのようにして止めるかという見直しは絶えず行っている。これも列挙してみよう。

  • アマチュア無線の活動は事実上停止している。
  • 8月のMaker Faire Tokyo 2016で痛感したのは、展示会の出展側に回ることの疲労である。今後、仕事としての依頼でない限り、展示会の出展側に回ることは、特に6月から9月までの暑い時期には原則行わないことにしようと考えている。
  • オープンソース関連の活動については、旗振り役はもう若い世代に任せるべきではないかというのが率直な実感である。私のようなオッサン年長者は表舞台から積極的に降りるべきだろう。よってQiitaのアドベントカレンダーを主催するのは今年を最後とする旨宣言した。
  • 生活は引き続き大変厳しい。事業開始3年目であり、業務の展望について抜本的な見直しを行う時期に来ている。そして業務に直接つながらない出費については引き続き緊縮財政に努めている。

2016年は多くの災害や手段を問わない各種紛争に明け暮れた年であった。2017年は世界情勢の大転換は不可避であり、どのようになるか先はまったく見えない。今日まで生き残れていることは奇跡であり、日々の生活と業務を送れることはとても幸運なことなのだろうと思って来年2017年も活動していこうと思う。

2016年10月19日

お客様事例紹介: 横浜開港資料館 画像検索システム 開発と改修(2014/2015年度)

力武健次技術士事務所では、2014年度、2015年度の2年度にわたり、横浜開港資料館様の閲覧室にある画像検索システムの開発と改修作業を、有限会社ネクスト・ファウンデーション様のご依頼により実施致しました。詳細は横浜開港資料館様のえつらん室News(2015年5月9日の記事)にて、ご紹介いただいております。

この開発と改修作業にあたり、技術的に留意した点は以下の通りです。

  • HTML5+CSS3+各種JavaScriptツールを使いWebサイトとしてシステムを全面的に書き換えることにより、各種ブラウザに対する互換性の提供と、将来にわたってコンテンツの可用性を維持することが可能になりました。
  • 静的サイト生成を行うことで、現在の利用形態だけでなく、他の利用形態でも使えるように設計をしています。
  • UIの設計にあたっては、できるだけ簡素で、かつ利便性の高いものであることを目指しました。

横浜開港資料館様は横浜市中区のみなとみらい線日本大通り駅に位置する歴史的にも由緒ある建物で、横浜のみならず日本の歴史を知る上で貴重な資料を多数展示されています。閲覧室の画像検索システムはどなたでも利用できます。ぜひ一度ごらんになっていただければ幸いです。

力武健次技術士事務所では、お客様からのWebサイト制作のご依頼にあたっては、今後も可能な限りシンプルなWebサイトの提供を目指していきます。

なお、本記事に記した実績の公表にあたり、ご快諾いただいた横浜開港資料館様と有限会社ネクスト・ファウンデーション様に深く感謝申し上げます。

2016年10月9日

書評: 「ITエンジニアのための機械学習理論入門」

書誌情報: 中井悦司、「ITエンジニアのための機械学習理論入門」、技術評論社、2015, ISBN978-4-7741-7698-7

(本書は2015年10月に技術評論社Software Design編集部の池本様よりご恵贈いただきました。書評が大変遅れて申し訳ありません。)

現在「機械学習」と称されるニューラルネットワークの技術は、私が過去25年以上にわたって遠ざけてきた苦手なものの1つである。大量のパーセプトロンの組み合わせで特性情報が得られるという「夢のような話」に納得することは、「コンピュータというのはアルゴリズムで説明し得る作業のみが行えるもの」という定義で生きてきた私自身の考え方では極めて困難である。2016年現在得られているニューラルネットワークの成果全般に反駁するつもりはもちろんないし、その有用性を否定するものではないが、単にニューラルネットワークの説明を受けただけでは残念ながら私の疑問は消えない。申し訳ないがこの疑問は死ぬまで消えないだろう。(法的にもこの「なんで?」という問題は存在しており、「判断過程の不透明性に関わる問題」として現在も議論が続いている。)

本書はこの「なんで?」という部分に、統計学の観点から光を当てて解説しようとしたものであり、どういう計算手法を使えば結果がより目的にかなったものに近づくかの判断例が記されている。具体的には以下の流れで示されている。

  • 最小二乗法の推定から複数のデータセットを使ったクロスバリデーションとオーバーフィッティングの問題の説明
  • 尤度関数による確率モデル(最尤推定法)の導入
  • 勾配降下法による多次元ベクトルへの適用(概念としてのパーセプトロンの導入)
  • ロジスティック関数と偽陽性率の関連
  • 教師なし学習におけるk平均法とEMアルゴリズム(期待値最大化法)
  • ベイズ推定の適用と最尤推定法との比較

これらの手法は、ニューラルネットワークが「なぜそうなるか」を説明するものではない。しかし、どのように使えばより統計学的に筋の通った結果を得られるかについての手法としては一貫しており、ニューラルネットワークを「どうやって使えばマトモな結果が出るのか」についての実践的な説明になっている。アルゴリズムからの演繹的説明が不可能な以上、このような「結果が統計的にこうなるのでアルゴリズムはこう使うべき」という説明が、現時点では最も有用であると思う。その意味で本書は(統計も大の苦手である私のような者を含め)ニューラルネットワークの結果を評価する上の第一歩を知りたい人には大いに役立つであろう。そして本書は基礎理論の解説書であり、大学での教科書に使えるだけの中身のある力作である。

なお、本書にはサンプルコードが用意されているが、書籍の中ではサンプルコードがどのような概念を示しているか、そしてその動作結果が何を意味するかの説明に徹しており、サンプルコードの表面的な解説がなされているわけではない。言い換えれば、プログラマとしての知識は要求されず、数学の基本的知識があれば読めるようになっている。その意味でプログラミングの苦手な人にもおすすめできる。

書評: 「ニッポンの個人情報」

書誌情報: 鈴木正朝、高木浩光、山本一郎、「ニッポンの個人情報」、翔泳社、2015、ISBN 978-4-7981-3976-0

(本書は2015年2月に翔泳社の井浦様よりご恵贈いただきました。書評が大変遅れて申し訳ありません。)

鈴木正朝、高木浩光、山本一郎。

この3人の名前のうち、一人でも見て恐怖を感じないようであれば、日本のプライバシー問題、特に個人情報の扱いが実務者にとってどれほど難しいかについての、理解が不十分と思ったほうがいい。正直いってこの御三方のうち一人と対峙しなければならなくなったら、シッポを巻いて逃げたい。その3人がまとめて鼎談しているこの本は、正直いって重い。重すぎる。怖くて読めない。「ニッポンの個人情報」とか、「プライバシーフリーク」とか、そんな軽そうな言葉に騙されてはいけない。

しかし、現状の混沌と矛盾、法律の手抜き、そしてそもそもの「プライバシー権」への認識がバラバラになっている現状を知るには、この本に書かれている内容ぐらいは知っておかなくてはならないだろう。その意味では対談形式で重要な論点が各所にタップリと含まれているこの本は貴重な存在といえる。重要なポイントは全部QRコードでURLへのアクセスがしやすくなっているのも良い。

この書籍の発刊後、個人情報保護法は改正され、「平成27年9月9日から2年以内に全面施行」される予定である(日本政府の個人情報保護委員会のページより)。この法律改正により、「個人情報」を仕事に使うすべての事業者(個人も例外ではない)がこの法律の適用対象となる。そういう意味では、もう誰も逃げられなくなっているのである。今までの経緯と問題点をふまえた基本をおさえる上では、必読であろう。

2016年9月19日

Erlang User Conference 2016にて発表致しました

スウェーデン王国ストックホルムにて開催されたErlang User Conferece 2016にて,力武健次技術士事務所 所長 力武健次が“Fifteen Ways to Leave Your Random Module”と題して英語にて発表致しました.スライドはspeakerdeck.comにて公開しています.また、この発表で使用したスライド原稿などはGitHubのレポジトリにて公開しております。

なお、Erlang User Conference 2016 での発表の模様は、こちらのYouTubeのビデオにてごらんいただけます。

2016年8月22日

大電力ラジオ放送の終焉

新年早々どうやって東京の拠点にて直接波のラジオ放送を受信するかということについて考えていたが、結局結論としては「何もアンテナを建てずに済ませる」のが一番良さそうだという話に落ちついてしまった。

その昔今は亡き関根慶太郎先生の最後のご著書であろうと思われる「無線通信の基礎知識」(ISBN-13: 9784789813464)にて予想されていたのが、「大電力大規模アンテナの無線通信は廃れ、小電力と小規模な到達範囲の無線局を多数置局する方向へ世の中が向かう」ということだったと記憶している。これを読んだ数年前はあまりその実感はなかったのだが、最近の世の中の情勢を見るに、もう大電力ラジオ放送は、少なくとも日本の都会では機能しなくなりつつあるのではないかという結論に至った。(この記事での話はいずれテレビ放送にも適用できると思うが、必要帯域や電力レベルを考えると、テレビでは技術的制約はずっと厳しくなるだろうと予想できる。)

以下に理由を箇条書きで書いておく。

  • ラジオ受信機とスマートフォンとの間の価格差は縮小している。家庭内にWiFi+定額インターネット回線が整備されつつあることを考えると、スマートフォンでインターネットラジオを聞くこととラジオ受信機で直接ラジオを聞くこととの差は縮小しつつある。
  • 移動中であっても、日本では3G/LTEの回線が整備されている地域であれば、ユニキャストのインターネットラジオでも基地局間のハンドオーバーが機能している限り中断はまずない。東京や大阪の地下鉄の中の状況を考えれば、むしろラジオ直接放送よりもアクセス範囲は広いくらいである。
  • 中波放送を電波で聞くのは、家屋内あるいは屋外の雑音(インバータやスイッチング電源の普遍的使用、特に最近は太陽光発電、LED電灯などの大電力パワーデバイスによる使用)を考えるに、ますます困難になりつつある。非常時あるいは停電時を除けば、その機能はインターネットラジオ(日本ではNHKのらじる☆らじると民放のRadiko)で十分補完されつつある。
  • FM放送を電波で聞くのは中波放送に比べればずっとノイズ耐性は高いが、これについても非常時あるいは停電時を除けば、その機能はCATVのFM放送中継、あるいはインターネットラジオで十分補完されつつある。(オーディオマニアの直接波受信指向については例外的な趣味として判断すべきであろう。)

平時の大電力ラジオ放送は以下の技術で置換されるだろう。

  • インターネットラジオ
  • CATVによるFM放送中継(あるいは地デジのデータ放送を使ったAMラジオの中継)
  • 3G/LTEあるいはそれ以降の携帯電話網

パラダイムシフトがあるとすれば、「大規模かつ広範囲なカバー範囲を提供する独立した無線局」から「小規模かつ小電力な狹いカバー範囲を提供する無線局が多数ネットワーク接続された複合体」への移行であろう。この環境では「マルチキャストあるいはブロードキャスト」とユニキャストのコストの違いはあまり意識されない(技術的にどのような負荷がかかるかとは独立した問題である)。この移行はまだ完了していないとはいえ、すでに起こっており進んでいることと予想できる。 このような移行によって失われるものがあるとしたら、それは以下の一点に要約されるであろう。

  • 単なる受信機では放送は受信できなくなったため、各端末に必要なエネルギー量が大きく増えている。携帯網あるいは無線LANに接続される端末は本質的に送受信機である。

この状況下で、大規模ラジオ放送の役割とは何なのか、今一度考えてみる必要があると思う。

(初出: Facebookの自分のタイムラインより 2016年1月3日)

2016年8月18日

祝「プログラミングElixir」刊行

このたび,Programming Elixir 1.2の日本語版がオーム社より「プログラミングElixir」として刊行される。この本は2nd editionであり、すでに3rd editionであるProgramming Elixir 1.3のプロジェクトが進行中だが、それでも日本語で初の本格的なElixir並行プログラミングシステムの書籍が出版されるのは大変喜ばしいことである。著者のDave Thomas、翻訳者の笹田さんと鳥井さん、編集者の方々、レビュアーの方々、そしてその他関係者の方々の努力に深く敬意を表したい。私もErlang/OTPに関わってきた者として、微力ながらレビュアーとして参加することができた。

以下は、「プログラミングElixir」発刊にあたっての、個人的なポエムである。

この本の「推薦のことば」にも書いたのだが、Dave ThomasがErlang Factory SF Bay 2014に現れたとき、「なんでRubyの人がErlangに関係あるのか」が、正直いってよくわからなかったのは当時の率直な実感だった。この時の彼とJosé Valimが共同して行ったプレゼンテーションは、"Catalyze Change"、つまり「変化を触媒となって加速しよう」というものだった。内容は、Erlangを読み慣れていない入門者にとって、Erlangのエコシステム全体がいかにわかりにくいかというのを徹底して糺弾するという、Erlang/OTPのファンにとってはかなり耳の痛い内容で、現場の空気は少なからず殺伐とした感じになったことを覚えている。そこでは、Erlangの文法のわかりにくさ、レコードの使いにくさ、マニュアルの読みにくさが強調された。これらの傾向は2016年の今でも直ったとはいえないだろう。Erlangのいわばドス黒い部分である。もちろんこの悪条件を越えている人達はいっぱいいるし、私もそれほどは気にならないが、多くのErlangを勉強しようとした人達を敬遠させる原因になったことは否定できないだろう。そういう意味でDave Thomasがやったのは、かなりキツいプレゼンだった。「Erlang/OTPにはこんなに未来があるのに、なんでこんな状況を放っておくんだ」というDave Thomasの不満は相当なものだったと思う。

しかし、Dave Thomasはそこで終わるような人ではなかった。なにしろThe Pragmatic Programmerという本を書き、Pragmatic Bookshelfを作った人である。彼はErlang/OTPに持っていた不満について、おそらくElixirに救いを見出したのだと私は思っている。そして彼はElixirを普及させる本を自分で書いてしまった。それがProgramming Elixirという本だった。かつてRubyに対して熱心だったDave Thomasは、今度はその情熱をElixirに向けたのだと私は思っている。残念ながらRubyに関する本は私はほとんど読めていないのだが、Pragmatic Bookshelfのラインアップを見ても、そのことは証明されているだろうと思う。なにしろMetaprogramming Elixirなんていう、Elixirのマクロを知らないと読めないような本、そしてPhoenixフレームワークのProgramming Phoenixという解説書まで出版させているのだから。こんなElixirに対してマニアックな人が他にいるだろうか?

Elixirが有名になってきた過程で、Erlang/OTPの側にいた人達は、かなり当惑していたように思う。ElixirにはErlang/OTPにない要素がたくさん詰まっている。そういう意味で私はまだElixirはほとんど使えていない。たぶん死ぬまで使えるようにはならないだろう。それくらいElixirは奥が深い。Erlang/OTPも2008年からつき合っているが、おそらく死ぬまでまともに使えるようにはならないだろう。どちらも奥が深すぎる。並行プログラミングシステムは、人類にはまだ早いのかもしれない。そんなことを思いながら、少ない時間の中で何度も実験を繰り返し、失敗し続けているのが現状だ。でもErlang/OTP単独ではできないことがElixirでできる。そのことは確かだ。だからElixirを支持しようと思った。その判断は間違っていなかったと思う。なにしろElixir、Erlang、どちらのコミュニティも小さすぎる。仲違いしている余裕なんかない。誰がErlang/OTPを維持し続けるのかということを考えたら、ElixirをきっかけにErlang VMを使うようになった人達を、仲間として歓迎こそすれ、絶対に敵にしてはいけない。今のところ、そういう判断でコミュニティは上手く回っているように私は思っている。共存共栄である。幸い、Erlang/OTPのプログラマの多くは、自分達のツールをElixirにも対応させている。

残念ながら未だにDave Thomas本人と個人的に話をしたことはない。しかし、Elixirを引っ張ってきた設計者でありErlang/OTPの辣腕プログラマでもあるJosé Valim、Phoenixフレームワークの作者Chris McCord、hex.pmパッケージマネージャの作者Eric Meadows-Jönsson、今はErlang/Elixirから離れているように見えるがビルドツールkerlを作りElixirの初期の普及に尽力したYurii Rashkovskii(この4人は皆若い!)、そして私同様のオッサンではあるがElixirの普及に力を注いできたBruce Tateなど、多くの強者達と話をし、彼等の作品に触れた経験で考える限り、ElixirはErlangが作ってきたエコシステムの可能性を大きく広げたことは間違いないと私は確信している。そのことをずっと前から見抜いていたDave Thomasについては、さすがとしかいいようがない。

「プログラミングElixir」は、どちらかといえばProgramming Erlang(第2版)(日本語版は「プログラミングErlang」(第1版の翻訳))同様、リファレンスではなく、最初から最後まで読んで手を動かしていくことで、プログラミングシステムの基本が身についていくようになっている本である。中にErlangのコードはほとんど出てこない。やっぱりErlangはDave Thomasには嫌われているのかもしれない(笑)。でも、OTPという単語は出てくる。だからOTPは知らないとこの本はわからないかもしれない。ということは、Elixirのマニュアル同様、Erlang/OTPのマニュアルを読まないと結局はいけなくなるのだろうと思う。Elixirは多くのElixirで書かれたモジュールを持っているが、実際はErlang/OTPのモジュールにも多くの機能を依存しているからだ。そういう意味で、この本を読んで先に進むには、Erlang/OTPの本が必要かもしれない。幸い、オーム社からは「すごいErlangゆかいに学ぼう!」(このblogで紹介した記事へのリンク)という本が2014年に出ている。両方読んでみることを、ぜひお勧めしたい。

これを機に日本でもElixirErlangに触れる人達がますます増えることを願っている。

2016年8月17日

個人事業ブログとの統合のお知らせ

個人事業ブログはTumblrで動かしていたのだが、米国Yahoo!の買収やセキュリティ攻撃などもあってTumblrの先行きが不安定なこと、そして個人としての自分は事業をやっている時とそうでない時と特に人格が変わっていないこと(変わったら大変だ…)など、諸々の理由により、個人事業のブログ(現在はblog.rikitake.jpで書いている)をこちらに統合することにした。blog.rikitake.jpからのリダイレクト先を変えれば済む話なので、運用上はそれほど大きな問題にはならないだろう。

なお、移行の際は記事数が少ないため、投稿日時を可能な限り保存しつつ手で移行する予定である。そのため、古いURLは消えてしまうが、そんなに記事数が多くないため深刻な問題にはならないだろうと予想している。 このblogの文体は基本的に「である調」だが、それ以外は今までの個人事業ブログと内容を変えることはないであろう。まあいわば事業報告をこちらのblogでもやっていくことになる。

2016年7月1日

大阪大学基礎工学部電子物理科学科にて平成28年度の講義を担当致しました

大阪大学基礎工学部電子物理科学科エレクトロニクスコースの平成28年度科目「電気工学特別講義」にて、力武健次技術士事務所 所長 力武健次が、2016年6月14日、21日、28日の3回にわたり講義を担当致しました。

講義の内容はInternet of Things(IoT)をめぐる諸問題についての一般的な解説です。詳細についてはこちらのGitHubレポジトリに公開しております。

なお、力武は平成21、22、27の各年度にも同講義を担当しており、今回は通算4年度目の登壇となります。

2016年3月17日

SFOあるいはサンフランシスコ雑感(2016年3月)

(写真はMarine's Memorial Club and Hotelのマスコットのブルドッグの絵)

SFO雑感。昨年2015年に続いて、米国カリフォルニア州サンフランシスコの雑感です。年に1度しか来ないですが、定点観測になってるので話のネタにはなるかも。

SFO雑感(1)米国はメートル法じゃないので、温度と長さの換算は暗記しておくのが吉。先週のSFOは長雨、日中の気温は最高60度(摂氏15度)に行かず、55度(摂氏13度)ぐらいの日が多くて、寒かったです。風速は30マイル(= 48km/h = 13m/s )で、雨量が1日で1インチ(25.4mm)とか、まあ換算が大変でした。ただ、これに慣れていれば、The Weather Channelで必要な気象情報は得られるので便利です。

SFO雑感(2)どこでもgratuity(チップ)が必要。現場の人達の貴重な小遣いなので「気は心」で。20%が相場かな。部屋の掃除の人にはUSD2、食堂の人にはUSD2.50をあげてました。レストランだと15%〜20%ぐらいでしょうか。

SFO雑感(3)公衆電話見ません。もう全部スマホです。ガラケーも見ません。

SFO雑感(4)ダウンタウンでは午前2時でも平気で皆騒いでます、が、今年は雨のせいかあまり聞こえませんでしたねえ。夜間は1990年代からずっと怖いです。まあ、チャイナタウンからNob Hill方面に集団で歩く分には、それほどキツくはないですが。

SFO雑感(5)SIMはT-Mobile(US)のプリペイドのを買うとテザリングもできる料金プランがあるしトッピングもできるので便利です.長期の滞在なら、T-MobileのSimple Choice Prepaidプランに、International Callオプション(日本他への地上回線かけ放題)というのがお得です。Union SquareのT-Mobileに昨年行っていろいろやってもらったのを、ちょこちょことチャージしながら、今年も使いました。ただ、月USD65程度と高いので、使い終わったらPay As You Goのプランに切り替えないと死にます。この場合の維持費はUSD3/月。

SFO雑感(6)LTEの周波数は日本のスマホの大半では対応していないので使えるのは3G/HS(D)PAだと思っておくべきでしょう。どうしてもLTE使いたいなら、現地の端末を調達してしまうのも手かも。

SFO雑感(7)米国の硬貨は25セントが事実上最高額で、1ドル以上は全部お札です。数十枚単位で用意しておかないとチップが大変。あと必要なのはUSD10/USD20のお札。USD5のお札は大変便利です。まあもっともデビットカード相当のクレジットカードがあれば、それで済んでしまうので、あまり現金はいらないかも。

SFO雑感(8)ホテルで騒ぐ客は結構いますが、宴会で酔っ払って意識不明になったり絡むのは禁止行為です。即刻追い出されます。大目には見てくれません。Please drink responsibly! ということで、お酒はほどほどに。また、屋外での飲酒、路上での飲酒は違法です。

SFO雑感(9)基本的に路上および建物から一定の距離以内は禁煙です、が、屋外では結構皆吸ってます。

SFO雑感(10)全般的にバブルです、が、昨年ほどではなかったような、気がする。

SFO雑感(11)ウォシュレットはありません。お尻はよく洗いましょう。

SFO雑感(12)身体を洗うための設備はシャワーが主で、風呂桶はないか、あってもごく浅いものがほとんどです。今年はついにRestroom/bathroomの電灯が洗面台にしかない部屋だったので、なかなか夜は暗くておどろきました。昼は外光が入る設計でよかったんですけどね。

SFO雑感(13)英語母語話者以外は皆思い思いの英語もどきを話しています。だから通じなくても気にせず通じるまで続けるのが吉です。相手もそういうものだと思っています。別の言い方をすれば、何か言わないと相手にされません。英語ができないのを察してくれるなんていうことは絶対にあり得ません。ただ、皆人間なので、なんかしんどそうだな、ということはわかるようで、そういう状況で話を切り出すと相談には乗ってくれることもあります。

SFO雑感(14)公衆トイレは空港などを除いて原則ないものと思ってください。また飲食店のトイレは個室になっているので混雑時は待たされます。オークランド(Oakland, CA)のチャイナタウンの中華屋では、別室の共同トイレに案内され、そこは全部施錠してあって(香港等同様これは犯罪防止の観点から常識)、店の客も電子錠開錠用のカードを店から借りて行くようになってます。外部の人はUSD20を預けるか、身分証明書を預けるか、しないといけないとか書いてありました…。

SFO雑感(15)Market St.他大通り、そしてTaylor St.等のTenderloinと呼ばれるいわくつきの地区は人が行き倒れていたり、わけのわからないことを叫んでいる人がいますが、無視して歩くしかありません。小銭をせびる人もいました。ただ、ホームレスの人達の精神障害は無視できない問題になっていて、結構面倒なようです。なお、私はMarketの南側には近づかないようにしているのですが、どの地区が危険かという情報は仕入れておく必要があります。

SFO雑感(16)自分が車運転しないんで詳細はわかりませんが、市内の渋滞は年々ひどくなっています。帰国時に朝8時前後の101でSFOに戻ろうとしたら、SF中心部から40分ぐらいかかりました。Bayshoreに一度下りて戻るという、迂回路を使ってこれでしたから。

SFO雑感(17)日本食はあてにしてはいけません。全体に油が多く、味もきつめです。テイクアウトの中華とも東南アジア風ともつかない料理が意外に吉かも。ただ今回は自分の好みで外食する暇がほとんどありませんでした。スーパーで売っている巻き寿司が定番で、意外と良いです。あと日本のアルファ米ベースの非常食は重宝します。

SFO雑感(18)日本円が安くなったこともあり、物価は高いです。大体日本の倍です。ドラッグストアなどでもバッグは有料、店によってはクレカは手数料を取られます。自前バッグがより良いかも。もちろん詰めてくれます。

SFO雑感(19)ホテルで従業員や他の客、そしてもちろん知人と目が会ったら声をかけて挨拶しましょう。しないと怪しまれます。

SFO雑感(20)Financial District - Union Square - Nob Hill 方面は、坂は多いですが、昔の建物がたくさん残っているので魅力的かも。ただ、結構歩きます。

SFO雑感(21)当然ながら左ハンドル、右側通行です。シートベルトは法令で着用が義務付けられていて、付けないとブザーが鳴って走りません。

SFO雑感(22)大部分の交差点の歩行者用信号には「あと何秒」の表示が出るようになりました。守って渡りましょう。結構時間が短かいので要注意です。

SFO雑感(23)サンフランシスコのアジア系の中で日本人は本当の少数派になってしまいました。過去の在住経験から類推しないのが吉です。言い換えれば、アジア系同士でいがみあっていられるような状況ではありません。

SFO雑感(24)タクシーは市内では拾えますし、呼べば来ますが、飛ばすので、飛行機の乱気流なみには揺れます。Uberはまだ私は自分では使いませんでしたが、呼んでいただいた車に数人の団体で乗った限りは、概して問題なく快適でした。

SFO雑感(25)鉄道ですが、BARTはまあ普通に使えます。ちょっとチャージにコツが必要ですし、意外と高額ですが、日本のJRの都市部の郊外線みたいなものです。路線図は調べていったほうがいいでしょう。(bart.gov) MUNIのメトロやCalTrainはまだ使ったことがありません。駅のエスカレータは片側が空きます。

SFO雑感(26)公共交通網は決して高度ではありません。歩いて動くしかない場合がほとんどです。坂も多く、健脚であることが要求されます。車の運転できない人、そして歩行障害のある人はご注意を。

SFO雑感(27)Apple StoreはUnion Squareの近くにあるはずなんですが、今回は周辺が工事されていて、詳細を確認できませんでした。

SFO雑感(28)Union Squareの周囲にはMacy's、SAKS Fifth Avenue、Nieman Marcusなどの高級百貨店が揃っています。おみやげにどうぞ。あと、Embarcadero Centerの各種小売店もお勧めかも。今回はAmbassador Toysというおもちゃ屋さんに行きました。

SFO雑感(29)ただアメリカ人に「デパートで買い物する」というと怪訝な顔をされます。デパートのない都市が大半だからですが。

SFO雑感(30)サービス業の人達、基本的に愛想はいいんですが、手先が不器用です。そういうお国柄なので多くを期待しないのが吉。あと、余計な単語は極力使わないように会話しますから、基本的に形式立った文章にはなりません。

SFO雑感(31)SFOの空港周辺は3Gのカバレッジは昨年よりは充実してきましたが、一部GSMのEDGEになってしまうところもあります。ただ、SF市内での3G(HSPA+/HSDPA)には困りませんでした。

SFO雑感(32)ネットワークの回線は日本よりは遅く、混み合っています。RunkeeperのGPS機能も使ってみましたが、そこら中のビルでGPSの電波が反射してしまうため、かなり悲惨なことになりました。

(初出: Facebookの2016年3月17日の自分のタイムライン)

2016年3月12日

Erlang Factory SF Bay 2016にて発表致しました

米国サンフランシスコにて開催されたErlang Factory SF Bay 2016にて,力武健次技術士事務所 所長 力武健次が“Fault-Tolerant Sensor Nodes With Erlang/OTP And Arduino”と題して英語にて発表致しました.スライドはspeakerdeck.comにて公開しています.また、この発表で使用したソースコードやスライド原稿はGitHubのレポジトリにて公開しております。

なお、Erlang Factory SF Bay 2016 での発表の模様はYouTubeにて公開されております

2016年2月20日

Software Design誌にて「Erlangで学ぶ並行プログラミング」を連載しました

技術評論社のSoftware Design誌にて,力武健次技術士事務所 所長 力武 健次が,同誌2015年4月号より2016年3月号まで「Erlangで学ぶ並行プログラミング」と題して連載を行いました.ぜひご一読いただければ幸いです.

2016年2月18日

大学で過ごした日々

1984年から東大で学部から修士まで6年間、2002年から阪大にて外部の研究協力者として、また社会人博士の学生として3年過ごし、2010年から京大では教授として3年弱勤務した。残念ながらそれらで得た結論は皆同じで、どこも組織としてはダメだった。もちろんその過程でいろいろな出会いはあったし、勉強もできたことを考えれば、全部無駄だったとは思っていないけれど。

最初に大学に行ったときは、コンピュータ屋は目指していなかった。大学の中では計算機屋の地位は低い。そして率直に言って日本の大学は計算機科学のレベルは高いとはいえない。東工大のTSUBAMEのような例外的成功例はあるが、基本的に米国の後追いを越えていないし、また越えられない理由が無数にある。もしコンピュータ屋を目指すのであったなら、学部の時点でUC BerkeleyやStanfordやMITを目指すべきだったと思っている。もっとも、お金もなかったし体力もなく健康でもなかったので叶わぬ夢だったが。

もっとも、そうはいっても、結局、自分は理論物理屋も地球物理屋もできず、さりとて成績も良くなかったのでそもそも理学部情報科学科への進学はかなわず、工学部応用物理関連学科群に進学することになった。本格的にコンピュータ屋に復帰したのは、修士の時に情報工学専攻で学ぶことになってからである。これが良かったのかどうかは、自分では判断できない。まあ、好きなことではなく、目をつぶってでもできることでなければ人間はロクに稼げないので、そういう意味では向いていたのかもしれない。

21世紀になっても相変らず旧7帝大が権勢を振るっているのが日本の実情だと個人的には思っている。国公立私立を問わず、文科省が生殺与奪を握っている以上、これは不可避かもしれない。国立大学も2006年に国立大学法人と名称を変えたとはいえ、どの大学も運営は官僚的そのものであり、計算機科学のような論文数も少なく何をやっているかわからない分野には理解は低い。

大学は基本的に外部との交流をものすごく嫌う。中の組織は皆それぞれの派閥を作りたがるので、常に相互監視疑心暗鬼の世界にある。このような状況はこの30年弱で変わるかと思ったが、大して変わっていない。かつて京都大学にて全学の情報セキュリティに関する仕事をしていたときには、多くの教員から敵意に満ちた批判を受けた。まあ職務上無理からぬこととはいえ、組織としての統制がまったく効いていない状態では、徒労感のみ残る仕事だったことは否めない。実際には、統制される側が自律しているとはお世辞にもいえない状況であり、日々起こる事案に対応しなければならず、現場は混乱の極みだった。

京都大学でもう一つ感じたのは、学生が自由を求めていろいろ騒ぐのはいいとして、本来それを受け止める側の教員までが同じように騒いでいる例が少なくないことだった。京都大学は対話を重視する大学をスローガンとしてかかげているが、実際には各人自分勝手な主張をしているだけで、何の対話にも教育にもなっていないように見えた。もちろん粛々と日常業務をこなし、一切動じていない先生方もたくさんおられたのもまた事実だが。自分もそのような日常業務をこなし、一切動じない教員になろうと努力はしたが、あまりにも不条理が多く、プロパーでないことによる立場の低さはいかんともしがたい状況であったため、結局健康を害してしまった。

そんなわけで、自分は大学に関しては、人生選択を誤ったなというのが率直なところである。計算機科学に限定するならば、北米のトップの大学へ行った方が遥かに実践的な勉強ができただろうし、現在なら他の選択肢はないに等しいだろう。

ただ、学術研究そのものに対する締め付けとコスト高騰の波は日本以上に北米は厳しい。コンピュータ屋の場合、大学を出てさらにテックベンチャーで滅私奉公して働くことを覚悟しない限り、自己破産でも免除されない学資ローンの借金で首が回らなくなることは想像に難くない。それが本当に正しい人生の選択なのか。そしてサンフランシスコの超高コスト社会で大きな出費を強いられるのが良いことなのか。


何が正しいか、今の私にはわからない。それが率直な感想である。

(初出: Facebookの個人アカウントでのNotes 2015年9月26日)

2016年2月8日

CROSS2016に参加して

先週2015年2月5日金曜日に、横浜にてCROSS2016というソフト屋/Web屋さんのためのイベントがあったので、行ってきた。アンカンファレンスではACM Erlang Workshop 2016とErlang Factory SF Bay 2016の話もしてきた。

CROSS2016には個人スポンサーとして参加した。これは自分のいた会社の元同僚が登壇者として出ていたこと、そして広告を出していただける珍しい機会だったことが理由だ。あと、登壇者の中にはずっと会いたかった人達がいたので、挨拶をしておきたかったというのも理由だった。(言い換えれば、そういう理由がない限り、自分が主たる登壇者にならないようなイベントに行くことは最近はまずなくなりつつある。)

各セッションの内容についての感想は以下の通り(プログラム)。

  • 労使の本音バトル: これはノーチラステクノロジーズの神林さんが言っていることがいちいち腑に落ちていて、結局 ship or die あるいは release or quit でしかないという感想しかなかった。別に何をやっていてもいいのだが、納期が守れないとどうにもならない。もちろん私も納期をトばしてしまったことは25年前ぐらいには何度かあったので他所様のことはいえないが。仕事を楽しくできることはもちろん大事なことだが、一度仕事を受けたら完結させるしかないというのは楽しい云々以前の問題だろうと思う。
  • 業務システムをRDBなしで作れるのか: このセッションは事前の資料なしには理解できない内容だったが、RDBなし、というのは、トランザクションを他のやり方で実現、あるいは担保するしかない、という基本に忠実な発表だったと思う。
  • 先達に聞くこれからのエンジニア像(この記事に概要がある): 登壇者の御三方の論調は予想できていたし、まあ率直な話勉強会にすら行かせてもらえないような会社で仕事なんかしたくないだろうなあとは私も強く思うのだけど(そういう制約がイヤで結局組織人としての人生を23年間で止めてしまったわけだし)、それが世間の常識と強弁できるほど世の中は甘くもないだろうなあという感想もあった。まあ日本には職業選択の自由と移動の自由が基本的人権としてあるはずなので、それを行使するもしないも個人次第だとは思う。伊勢さんの「死ぬわけじゃないんだからいいじゃん」というのには大いに笑った。怒られても殺されるようなことはない、というのはその通りだし。(もっとも、私は死にそうな目に遭ったこともあるので、死にそうになったら辞めるなり逃げるなり休むなりしたほうがいい、ということは強調しておく。)
  • 日本でのグローバルなプロダクトやサービスの開発とは: モデレーターの小野さんは登壇者の4人を御すのが大変だったろうと思うが(4人ともとても優秀な人達なので)、見事にリードしておられましたね。まあ、世界中で使ってもらえないようなプロダクトをOSSで作ってもしょうがないので、公開するOSSは全部英語でドキュメント作るべき、とは思う。OSSでなくて、特定のお客さんから日本語で作れという要請があれば、日本語でやればいいけど。あと、会場で時差の話が出ていたが、それについてはこのQiitaの記事に言いたいことは一通り書いているので、ぜひ読んでいただければ嬉しい。
  • アンカンファレンスではこのスライドの通り話をしました。終了後声をかけていただけたのはありがたい限り。

イベント全体はそれなりに良く運営されていたと思うのだけど、1つ苦言を呈するとすれば、会場の音響がメチャクチャで複数のセッションのPAスピーカーからの音が激しく干渉してロクに各セッションの音が聞こえない状態だったのは、とても残念だった。これだと何のためにイベントをやっているのかわからないので、音響の問題は次回はぜひ改善していただきたいと思う。あと、A会場/B会場では、照明の関係で話者の顔が見えないという指摘が知人からあった(その通りだと思う)。

ともあれ、今回は会うべき人達には皆ご挨拶できたし、それなりに楽しめたので、スポンサーシップを提供した意義はあったと思う。来年はぜひ音響面だけは改善してより良いイベントになることを期待したい。