2012年12月28日

今時のアマチュア無線 (2): 共同住宅とアンテナ

(写真: by Abraxas3d at flickr: http://www.flickr.com/photos/w5nyv/2564821385/)

今回も前回に引き続き「今時のアマチュア無線」について書く.

前回の記事について,「ノイズになってるのはお前の無線局の方だろ」という厳しいご指摘をいただいた.まあ電波を出す活動であるので,扱いを間違えればすぐに雑音源になってしまうのは致し方ない.しかし,私の場合は取るべき対策は最大限取るようにしている.電波を出す上でのたしなみみたいなものである.そこで「フェライトコア」という部品が活躍するのだが,この話は長くなるので,別の機会に書く.

とにかくアマチュア無線家のアンテナというのは異様である.地面からタワー(鉄塔)を立て,その上に時には幅数十メートルになる魚の骨のような八木・宇田アンテナを載せて喜んでいるのだから始末に負えない.日本の場合は私有地の中では建築基準法などに則る限り文句を周囲には言わせないという風潮があるようだが(とはいえ最近は東京都目黒区で50mを超えるタワーを建てようとして地域住民の反対運動が起きたため行政がルールを作ったという誠に残念な事例もあるらしい),北米や欧州,豪州やニュージーランドでは,そもそも市街地に鉄塔など景観を害するものを建てるのはまかりならないという地域の規制があるから,アンテナを上げるのも容易ではない.ちなみに私は共同住宅にしか住んだことがないので,とてもこんなタワーを上げるゼイタクはできないし,やる気もない.

(写真は自宅の短波用アンテナ(伸長時).2012年12月に撮影.プライバシー保護のため加工してある.)

幸か不幸か,今の自宅の環境はマンション最上階の角部屋で,かつベランダの鉛直方向上方が空いているという,共同住宅では大変恵まれた(?)状況である.2002年に無線を再開するにあたり,この環境を最大限に活用することにした.とはいえ,常設の金属パイプを使ったアンテナなどは望むべくもない.普段から風速毎秒10m以上,台風通過の際は毎秒30mぐらいまでは日常的に覚悟しておかなければならない環境であることを考えると,使えるのはあくまで仮設のアンテナであり,必要のないときは縮めておかなければならない.

とはいえ,短波,それも10.1MHzや14MHzといった海外交信に適したバンドでの通信を楽しむためには,最低でもダイポールあるいはバーチカルアンテナの片側には5m,できれば10mの長さを確保する必要があるため,アンテナには耐候性のある被覆電線を使い,それを絶縁体のグラスファイバーの竿(釣竿)で上に上げるようにしている.2012年12月現在は最大伸長時約7.2m長の竿を使っている.鉛直方向上に伸ばしておけば,仮に継ぎ目が緩んでも,重力が作用し落下するだけであり,かつ竿の各部分は電線で固定されているためバラバラにはならない,という仕組みである.このアンテナはバーチカルアンテナの一形態であり,電波の輻射を目的としないもう一方の側には,長さ4~7mの電線を数本接続してベランダの床の上に転がしてある.(安全のため,運用時はベランダは立入禁止である.)このような運用形態はマンションの多い都会では一般的である.なお,写真で近くに写っている別のアンテナは,120MHz近辺の航空無線を受信するためのものである(実際にはこれで中波放送も受信していたりするが,これもまた別の機会に書く).

こんなアンテナでも,100Wで給電してやれば,なんとか世界の大部分の地域と交信できるぐらいの実力はある.ベランダは南東方向に開けているため,特に太平洋各地との交信実績は多い.ただ,最上階で角部屋という電波障害を起こしにくい環境であること,そしてマンション自身が高台にあるということは,幸運であったと言わざるを得ないだろう.必要のない時は縮めておけるのも,日常生活との両立という上では大事である.